こうして利二の協力を手に入れた俺達は一つの結論を出した。


日賀野達が情報や人材の輪を広げているのなら、俺達も輪を少しずつ広げていこう、と。


今の俺達だけじゃ限界があるんだ。

向こうのことだからある程度、俺達のことは下調べをしているだろうし、どう手を打ってくるのかも予測がつくと思う。


だったら向こうの予測を掻き乱すような手を打っておかないとな。


だけど安易に輪を広げたら、逆にこっちの情報が漏れて向こうが優位になってしまうかもしれない。相手は慎重に選ばないと。


利二は俺と確かな繋がりがあるし、一緒に日賀野に襲われた一件もある。


だからヨウ達はすんなりと利二を信用したし、情報を仕入れてくるなんて願ってもない人材。


チームメートじゃないけど“五木利二”という優秀な人材と繋がりを持てたことは、俺達にとって確実な利益がある。


友達の俺としては複雑な気持ちだけど……さ。


このことは他校に通っているシズ達にもメールを通して連絡が回った。 

異論はないみたいで、向こうに気付かれないよう水面下で信用の置ける人材を集めようって話が出た。


直接俺等のチームに入らなくても、間接的に手助けしてくれるような奴等と繋がりを持てば俺等はより優位に立てる。


向こうだって今まできっとそうしてきたに違いない。

信頼の置ける人材ってのが難しいポイントなんだよな。


今、絶対的に俺等が信用しているのはチーム内のメンバーと利二、それから……。


「なんで俺がお前等について行かないといけないんだゴラァアア! 俺はお前等の仲間なんかじゃねえぞゴラァアア! ッ、いで!」

「うっせぇんだよ、吠えるなタコ沢。テメェは俺のパシリくんだろうが」


舎兄に容赦なく背中に蹴りを入れられているタコ沢を横目で見ていた俺は心の中で溜息をついた。 

我等がリーダーは現在パシリにしているタコ沢元気(本名:谷沢元気)を仲間内に入れると言い出したんだ。タコ沢は並外れたスタミナと根性を持っているし、それなりに喧嘩ができる男。


特に持ち前の根性は自分達にプラスだってヨウはタコ沢を半強制的に仲間内に入れた。そりゃもう脅しという名の勧誘だった。


口には出さなかったけど、俺は大反対だった。


そりゃタコ沢は使える男だと思うぜ。

俺のチャリのスピードに根性でついてくる男だし、負けると知っていてもヨウに何度も喧嘩を吹っ掛ける奴だし、熱くなるとそこら辺の不良をぶっ倒すし。


だけどさ、だけどさ。

こいつは俺とヨウに超恨みを持っているんだぜ?


俺等と顔を合わす度に「ここで会ったが百年目。今日こそ決着つけてやる!」なんて漫画じみた台詞を吐いて俺等に喧嘩を吹っ掛けて来る。


信用がないというよりも、こいつを仲間に入れることによってメンドクサッ! な事態が多々起きると思うんだ、俺は。


ほらほらほらぁっ、思った傍から俺、タコ沢とバッチシ目が合っちまってさぁ!


ガン飛ばされている。

田山圭太はタコ沢元気に喧嘩を吹っ掛けられそうだ。


嗚呼もう泣きたい! 俺は何も悪くないって! チャリでお前を踏んだことは認めるし謝るけど、でも俺は悪くない!


俺はそろそろーっと引き攣り笑顔をタコ沢に向けながらヨウの影に隠れた。

卑怯? チキン? なんとでも言えって。俺みたいな地味っ子だったらみーんなこうするからな! な!