嗚呼、なんてこったいセニョリータ。ドンマイケルだぜ田山圭太。


俺、見事にヤラかしちまったよ。アラームのセットし忘れちまったよ。今、8時22分だよ。あ、二十三分になっちまった。


寝惚けた目を抉じ開けながら、目覚まし時計を手にした俺は大きく溜息。


最悪……完全に遅刻だ、遅刻。家を出る時間とっくに過ぎちまっている。


上体を起こしてポリポリと頬を掻き、俺は視線を下ろす。

そこにはスヤスヤとまだ夢の中にいるヨウとシズの姿。起きる気配はまったくなし。

予想は付くけど一応、二人に「遅刻するぞ」と声を掛けてみる。

何度目かの呼び掛けに二人はモゴモゴと答えた。


「遅刻なんてどーでもいい」「まだ……寝る」っだってさ。


寝ている二人を置いて、俺だけ学校に行くわけにもいかない。


仕方が無いから先に洗面と制服に着替えさせてもらって、軽く朝食の準備して(自分の分は食ってしまって)、二人が起きてくるまでテレビを見ることにする。


朝から流れる話題のニュースを眺めていたら、利二からメールが来た。それに返信して、またニュースを見る。


そうやって時間を潰していたら、ようやくヨウが起きてきた。学校のジャージのまんま。


時刻は九時を回っている。

余裕で授業始まっちゃってるよ、おい。


何処に座れば良いか分からず居間の出入り口に立ち尽くしているヨウを手招きして、テーブルに着いてもらうよう指示した後、俺は台所に向かった。


カフェオレをコップに注いで、皿にあんぱんを載せてたら、シズも起きてきた。俺は二人分の朝食を用意して居間に戻る。


ヨウは目が覚めたみたいだけど、シズはまだ眠たそうだった。いやシズはいつも眠たそうだけどさ。


「今日のことだが……ケイ、シズ、学校をサボらねぇか? 俺はみんなにメールを送って呼び出そうと思っているんだ。
今の時間帯なら、近くの寂れた公園に集まっても誰もいねぇだろうからな。集められるだけ集めて話したい」


あんぱんを口に入れながら、ヨウはテーブルに頬杖ついた。

行儀悪いぞ、なんて言ったら睨まれそうだから、代わりにさっきの問い掛けの返事を返した。


「いいよ、話し合いは早めにするべきだろうしな」


眠たそうに目を擦りながらシズも返事する。


「ああ、異議はない」


母さんにばれたら大変だろうし、サボりたくもないけど、でもこればっかりはな。早め早めに話し合って手を打っておかないと。


俺達は日賀野達と本格的に対立する。


テーブルの上に置いてあった携帯を手に取った。


「ヨウ、俺がみんなにメールを出すよ。お前、まだメシ食ってるし。メールは早い内がいいだろ?」

「悪いな、頼む。みんなにはこうメールしてくれ」


ヨウの言葉をそのとおり打って画面に表示させていく。




『From:貫名渉... 件名:無題どうしても話したいことがある。
授業がサボれる奴は×公園に来て欲しい。できない奴はメールを返してくれ。重要な話なんだ。なるべく、全員来て欲しい。俺、ケイ、シズは一足先に×公園でみんなを待っている』




俺は、ボタンに指を掛けて一斉送信した。