「お、おい田山?」



大丈夫か、俺の様子に光喜が一変。

屈んで優しく体調を気遣ってきてくれる。が、言葉で慰められると思うなよバカヤロウ!

俺は、俺はっ、嗚呼、あろうことか不良と関係を作ってしまったんだからなっ! オトモダチなんて軽い関係じゃないんだからな!

「なんで俺なんだろう。俺じゃなくたって、他にも面白いヤツ沢山いるだろうに。いるだろうに」

「田山?」


「俺の人生終わった。もうやだ、お家に帰りたい。お家に一生引き篭もっていたい」


嘆きながら立ち上がった俺は、頭上に雨雲を作ってトボトボと教室に向かう。

あまりの落ち込みように光喜も、「マジでなんかあったのか?」と腫れ物を触るような接し方だ。


ははっ、だがしかーし、俺は立ち直れないね。立ち直れるわけないだろ。


だって不良と関係を以下省略。

兄弟になって以下省略。

俺の高校生活は暗黒に以下省略。


人生に絶望しながら教室に入ると、俺を見捨てた奴そのニ、そのサンが教室で待ち構えていた。

ニヤニヤと笑いながら、


「あ。圭太くんだ。怪我はしてなさそうだね」


嫌味ったらしく言ってくる薄情者そのニ。小崎 透(おざき とおる)。


「制服の下はどうなんだ?」


些少の同情を向けてくる薄情者そのサン。五木 利二(いつき としじ)。

どっちも地味グループに所属している日陰組男子だ。

俺とつるんでいる“地味友”とも呼んでいる。


挨拶代わりに昨日はどうだった、と聞いてくる薄情者達。


くっそー、分かるんだぞ。

内心じゃ「昨日何があったんだよ? どんな恐怖があったか聞かせろよー。笑わせろよー」とか思っているんだろ! 俺がお前等だったら同じことするんだ。

お前等も絶対にそう思っている筈! 地味な分、共通点があるしな。


普通だったら不貞腐れて対応するところなんだけど、今の俺は限りなくヒットポイントがゼロに近い。


遠い眼を作って、ヘラヘラヘラ。ケラケラケラ。あははのあははは。

ショックを通り越して笑う他なかった。もはや現実逃避の領域。