ヴー、ヴー、ヴー。

ヨウのポケットからまたバイブ音が聞こえてきた。

「今度は誰だよ」



ヨウはメンドくさそうに携帯画面を開いた。

また着信みたいで携帯を耳に当てている。

しかめっ面を作らなかったってことは、きっと気の置けない奴なんだろうな。

ヨウの表情が柔らかいもん。


「何か用か? ん? あ、俺んとこ? 悪い今日、無理だ。俺も泊まらせてもらうつもりなんだ。ケイの家。……ちょっと待ってろ」


どうしてでしょう、ひっじょうに嫌な予感がします。嫌な予感が。

こういう時の勘ってスッゲェ当たるんだよな……頼む、気のせいだって思わせてくれ。


半端なく汗が噴き出る。


祈るような気持ちを抱いていると、ヨウが俺と視線を合わせて片手を出してきた。


次の瞬間、爆弾発言投下。


「もうひとり泊められそうか?」


もうひとり? もうひとりって不良をもうひとりってことか?

……だよな、ヨウ繋がりっていえば不良だよな。不良をもうひとり、我が家に泊める。嗚呼、目の前が。

危うく暗転しそうになったけど、グッと堪えて平常心を装う。


「もうひとり?」


聞き返せば、ヨウは自分の携帯を指差してきた。


「シズが家に帰れそうにないからって俺のとこに掛けてきたんだ。ケイ、どうにかシズも入れられねぇか?」


フッ……まさかいっぺんに不良が二人も我が家に泊まりに来るような事態になるとは。誰が予想した、こんな未来。

けどな、俺、たった今ヨウに言っちまったんだよ。

最高で三人いっぺんに泊めたこともあるってさ。

言った手前、無理なんて、無理なんて……。


「部屋狭いけどいいか? って、シズに伝えてくれ」

「リョーカイ」 


嬉しそうにヨウは俺の言葉をシズに伝え始める。隣で俺は悶絶していた。

母さんは普通にOKするだろうけど(不良にはビックリするだろうけどさ)、まさか不良が二人も家に泊まりに来るなんて、来るなんて。


こんなことになるなら、泊まりに来いなんて言うんじゃなかった!


いや、言わなかったら言わなかったで後悔してたから、どっちが良いかっていうと、後々のことを考えて今の方が良い。


ただ泣きたいのも確か! ……俺ってホント、舎弟になってから運悪い。ツイていない。ロクなことない。俺が何したよ、神様。 




「泣くな、負けるな、田山圭太。お前の未来。まだまだ明るい、明るい筈だぞ……泣きたい」





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