ヨウは大丈夫だとばかりに肩を竦めた。


「今日は帰らねぇしな」


この発言に俺、唖然。帰らないってお前、帰らなきゃヤバイだろ。


……ヨウは帰る気なんてサラサラないみたいだ。


誰かの家に泊まらせてもらうか、一晩中、ファーストフードかどっかで時間潰すと言ってきた。こういうことはしょっちゅうで、本人曰く慣れているらしい。


もしかしてヨウのとこ、家庭環境に問題でもあるのかなぁ。

人のことだから、そーゆーの聞いちゃダメと思うんだけどさ。


今、俺の中で葛藤があっている。

俺の考えに第二の俺が「やめとけ! 泣き見るぞ!」と言ってんだけど、ホラァ、一応さ。

今日、世話掛けたってのもあるし、そんなこと聞いて「ふーん」で終わらすのは良心が痛むってかさ。


だけどやっぱ泣き見るのはヨウでもなく、俺、この俺、田山圭太ということで! 泣きは見たくない、見たくないけど平凡日陰男子の良心も痛む。

ウダウダ考えている頭とは対照的に、気付けば勝手に口が開いてた。


「ヨウが良けりゃ、ウチに泊まってくか?」

「ケイん家に?」


「そっ、俺ん家。俺ん家、泊まりに関しちゃ甘いんだ」 


俺の馬鹿野郎!

おまっ、自分可愛くないのかよ!

ただでさえ怪我している癖に、不良なんかを泊まらせたらゆっくり休めないじゃないか! 俺を死なせる気か!


第二の俺が罵声を浴びせてくる。


分かっているってそんなこと、けど仕方ないだろ!

このままスルーできるほど、俺の器はそこまでちっちゃくねぇよ!

スルーしたら悪い事したなぁ……後ろめたい気持ちになっちまうだろ!


後悔はしたくないぞ、俺!



心中にいる俺と第二の俺が大喧嘩してる中、表の俺はヨウに言葉を続ける。



「利二もよく家に泊まっていくし、最高で三人いっぺんに泊めたこともあるから。ヨウひとりくらい全然余裕だけど」

「行くいく! マジ、泊めてくれたら助かる」


願ってもいない申し出だと提案に飛びついてきた。


断る素振りなんて一瞬たりとも見せなかったもんだから、断ってくれー! ナニが悲しくて不良と一晩過ごさなきゃいけないんだ!

第二の俺が喚いている……諦めろ、第二の俺。ヨウ、スッゲェ嬉しそうだろ。もう無理だって。


今さら断れる度胸、お前にはあるか? ないだろ? ん、ないな。んじゃ諦めろ、第二の俺。どう足掻いてもこうなる運命だったんだよ。