「泣くなって。これで解決しただろ? も、なーんも心配ねぇんだからな」 



透と、少しだけ距離を感じた今日の出来事。

それはスッゲェ寂しくて、スッゲェ違和感があって、スッゲェ虚しい気分になった。


しょーがないよな、俺、不良とつるんでいるんだ。


一緒にいる時間が減ったなら、距離ができることだってあるし、ソイツの知らない面だって出てくるし、前まで無かった“疑われる”ことだってある。


正直、疑われた時は腹も立ったよ。

なんで疑うんだ。俺の性格知っているだろ。ってさ。


だけどやっぱりお前といる時間はそれなりに長かったんだ。


これからもそれなりに付き合っていきたい。同じ地味仲間としてさ。


そう思うのは俺の我が儘かもしんねぇけど、少なくとも透から詫びとか礼とか、そういう言葉を口にして欲しくないんだ。聞きたくも無い。


むず痒いというか、ハズイ。言わなくても分かっているから。



だからな、透。

お前が俺達にしてくれたことも礼を言わなくていいかな。


生徒会にチクれば先輩不良たちに何されるか、バカでも分かることを、恐怖が無かったわけじゃないだろうに、俺達のためにお前のしてくれた行動に、礼、言わなくていいかな。


面向かって礼を言うのは照れくさいし、お前だったら言わなくても分かってくれると思う。


「今日のことはおわりだ。な?」


その言葉に、透は何度もなんども頷いた。


明日からの俺との関係が不安だったのか(実を言えば俺もかなり不安だった)、

それとも今日のことがよっぽど悔しかったのか(ボコされた気持ち、すっごく分かる。一方的に負けるって悔しいもんな)、


廊下だってことも忘れて感情を吐き出し始める。


俺は苦笑いを浮かべて背中を叩く。




なあ、透。



昼休み(さっき)は以心伝心できなかった俺等だけど、きっと今はできていると信じている。信じているよ。

だから礼も詫びもイラナイし、逆に俺も何も言わない。そう思ってもいいだろ、なぁ透。




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