生徒会から疑いを掛けられて四日目。


ストレス溜まる日々を過ごしながらも、俺達は全授業をサボることなく出席していた。

勿論、ストレスを溜めているのはサボりの常習犯になっているヨウ達なんだけどさ(正直俺もサボり癖が付き始めていて、気だるさは感じていた)。


流石に四日目になると、残りの日も何事も無く過ごせるだろう。勝利すら感じていた。


だけど物事はそう簡単に流れてはくれなかった。

それは四日目の昼休み終わりの話。

いつものようにヨウ達と昼飯を食い終わった俺はハジメや弥生と一緒に教室に戻った。


すると教室の隅でしゃがみ込んでいる地味友の透の姿を見つける。

同じく地味友の利二と光喜が心配そうな面持ちを作って、何やら透に話しかけている。

弁当箱と水筒を自席に置いた俺は迷わず、透たちの下に歩み寄った。


「利二、光喜。透、どうしたんだ」

「あ、田山……それがさ、小崎。さっきからこの調子で、こっちも何があったか分からないんだ」


眉を下げた光喜が教えてくれる。

自他ともに認める心配性のお母さんのこと利二が甲斐甲斐しく透に話し掛けているけど、透は項垂れたまま。

床に顔を向けているから、どんな表情をしているか分からない。


「透、どうしたんだ」


俺も屈んで透に声を掛ける。

ピクリ、透は肩を震わせて俺を見上げてきた。

目を剥いた。透の口端が切れている。


まるで誰かに殴られたように、痛々しく口端がプッツリ切れて血が滲み出ていた。


どっか泣きそうで、どっか悔しそうな顔を作っている透は俺の手首を掴んで、


「圭太くん。ちょっと」


声を震わせて立ち上がる。


俺の返答なんて待っている余裕は無い。

そう言うように、早足で男子便所まで連れ出された。


便所にいた男子生徒が出て行くのを目で追った透は、辺りに誰もいないことを確認すると俺を見据えてきた。


いつものほほーんとして、地味に人を茶化す、あの透じゃない。瞳の奥にギラついた感情の炎が宿っている。

ホント、どうしたんだよ。

俺が声を掛けようとしたら、透が先に口を開いた。


「圭太くん……今日の昼休みの話なんだけど、いつものように不良と一緒だった?」


透の声は地を這うような、低いひくい声だった。俺は戸惑いながら一緒だったと返答。

直後、透は両手で俺のブレザーの襟元を掴んで迫ってきた。

勢いのまま壁に背中を押し付けられる。

痛くは無いけどスッゲェ焦る、この状況。


それ以上に見上げてくる透の目は恐い。


「昼休み、一緒にいた不良は全員だった?」

「え?」


「だから圭太くんといつもつるむ不良は全員揃ってたかって聞いてるんだ!」

「ぜ、全員って」



「答えろ!」



男子便所に透の怒号が響き渡る。

透の怒りに呑み込まれそうになっていた俺は、一旦、軽く息を吐いた。


落ち着け、おちつけ、透が何に対して怒っているか知らないけど、落ち着かないと質問に対してまともに答えられないぞ。

嫌な汗が背中に伝うけど、俺は無視して静かに答えた。


「全員揃っていたよ」


透は本当かとばかりに、俺を睨んでくる。

友達のガン飛ばしほど恐いものは無いよな。

そう思いながら俺は透が納得してくれるよう、昼休みのことを説明し始める。