「おっつー。ケイ!」


数A終了のチャイムが鳴ったと同時に弥生がやって来た。

授業中ずっと爆睡してエネルギーを温存していたせいか、かなりハイテンションだ。いいよな、寝れる度胸があってさ。

こっちは授業真面目に受けられなくてローテンションだって。

言っても弥生も不良だしな! テンションはある程度の合わせるぜ!

俺、自慢じゃないけど空気を読むのは得意(と思っている)。


「ケーイ、お昼だよ。おーひーる」


ニコニコしながら「お昼一緒食べよう」と言ってきた弥生は、俺に弁当かどうか聞いてきた。


「いつも弁当だよ」


弥生の問いに答えたら、「いいなー」俺の机の上に座った。弥生さん、一応、俺の机なんだけど。いや座ってもらってもイイケドさ。


「お昼代浮くよね。毎日お昼買ってたら馬鹿にならないもん。それにケイのお弁当って可愛らしいよね。タコさんウインナー毎日入ってるんでしょ? ケイって趣味可愛いよね」

「そうなんだ。昼代がバカにならないから、母さんが弁当を……って、ちょっと待ったァ! 弁当の中身は俺の趣味じゃないって! 母さんが勝手に」


「え、お母さんに頼んでるんじゃないの? ワタルが言ってたよ」


頼んでいるか! 俺はそんなメルヘンチック男子じゃないっつーの!

寧ろ、ちょっとばかし恥ずかしいんだぜ? 高校になってまでタコさんウインナーが入ってること……。


とにかく俺の趣味じゃない。

くっそう、ワタルさん、適当なこと言いやがって。

弥生と駄弁っていたらハジメが大きな欠伸を零しながらやって来た。


「ケイ、弥生、昼飯は?」

「私は売店で買って来るつもり。ケイはお弁当があるって。ハジメは?」


もう買っているとハジメはコンビニのビニール袋を俺達に見せ付けた。

ハジメはいつも昼休み前に学校を抜け出して、コンビニで昼飯を買うんだ。

けど今日から一週間、真面目に学校ライフを送らないといけないから登校中に買って来たそうな。

一週間は学校を抜け出すこともデキナイしなぁ。

面倒だけど、そうするしかないよな。


「ホント厄介なことに巻き込まれたよ。まさか犯人扱いされるとはね。まあ、生徒会長サマの言い分も分からなくは無いけどさ」 


ダルそうにハジメが溜息をついた。心外だとばかりに弥生は脹れ面を作る。

「ヒッドイ話だって。十分な証拠も揃ってないくせにッ、あああああっ、ムカツクー! 思い出しただけでムカムカする!」

「弥生、ヒッドイ顔になっているよ」

「ハジメ酷い!」

弥生の脹れた顔が更に脹れる。

おどけてみせるハジメは笑声を漏らして、早めに売店で飯を買うことを勧めていた。早くしないと人気商品は無くなるから、そう言葉を付け足して。


脹れたまま弥生は俺に「酷いよね」話を振った。