「この事件は今日の午前中だっつったな?」


「ああ、何度もそう言っているけれど」



「じゃああ、俺はやっぱり無関係じゃねえかゴラァアア! 俺は今日の午前中、ずっと職員室で教師どもから小言を貰ってたんだぞゴラァアア! なのになんで俺まで呼び出されてやがる!」



自分は関係ないと熱く主張する漢不良・タコ沢元気。


そっかぁ……お前、午前中サボってたわけじゃないんだな。

なのに呼び出されちまったんだな。

ヨウのパシリくんなもんだから、疑いが自然とお前の方まで流れてきたんだな。可哀相に。


タコ沢の主張に須垣先輩はキョトンとした顔をしていたけど、「職員室にいたのか」と納得したように頷いた。


「ということは谷沢くんの疑いは晴れるね。僕の出した条件はしなくても」

「タコ沢くんは俺達と一緒にいたもんな?」


満面の笑顔でヨウがタコ沢の肩に手を置いた。


「ふ、フザけんな! 俺は午前中」

「俺達といたもんなー? 君は俺のために働いてくれてたもんなー? 君は俺の優秀なパシリくんだしなー?」


テメェ、まさか自分だけ助かろうなんざ思ってねぇよな?そんなことしてみやがれ、後でどーなるか覚えてやがれ。あ゛ーん?

笑顔でタコ沢を脅すヨウの内なる声が聞こえた気がしたのは、果たして俺だけだろうか。


「一緒にイマシタ」


握り拳を作って怒りを堪えているタコ沢は盛大な舌打ちを一つした。

タコ沢、賢明な選択肢を選んだと思うぜ! ヨウに逆らったらお前、後々フルボッコにされるって!


あと俺から言えるのは一つ、タコ沢ドンマイ!



俺は哀れなタコ沢に励ましの言葉を贈った。

口に出すとタコ沢がキレることが分かっているから、心の中で贈ってやった。



こうして俺達は身に覚えのない容疑を晴らすため、一週間授業をサボらないという短くて長い日々を送ることになったのだった。



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