「ケイ。何してるんだよ、こんなところで」
だぁあああッ、お前ッ、空気読め!
何してるって、どっこをどう見たってお前と同じ理由だろ?!
呼び出されて説教もどき受けてるんだよ!
ほっらぁ、俺とお話していた(一方的愚痴を零していた)前橋がこめかみ押さえているだろ?!
お前に説教垂れてた担任の怒りを、お前は肌で感じないのか?! めっさムンムン怒りオーラが向い側の机から感じるんだけど?!
「何って……説教喰らってるんだけど……出席のことで」
「はははっ。ダッセェ、ケイ。やっちまったなー」
ださッ。
人のこと、言えないだろ、荒川くん。
君も出席のことでやっちまってるんだろ?
寧ろ俺の出席、ある意味、君達のせいでもあるんだぞ。
「やっちまったよなー」
ヤケクソで笑った。笑って見せた。もう笑うしかないぜ、マジで。
「荒川。森次先生がオカンムリだぞ。戻れ」
「ウッセェな、前橋。テメェにはカンケーねぇだろ。話し掛けんな」
あああっ、前橋に喧嘩を売るなよ! とばっちりが俺にくるだろ? お、れ、に。
内心メッチャビビッてる俺を余所に、ヨウの担任がこっちにやって来た。
「荒川ッ、人の話を聞かない上に途中放棄かッ、話は終わって」
「はいはいはいはい。これからはちゃんと授業にサボりませんー。スミマセンデシター」
ヨウ、謝る気ゼロ。
教師の神経を逆立てすることがスンゲェお上手。
すぐ傍で見ている俺の心境『帰りたい。逃げたい。俺には関係ない!』
ああ、胃が嫌にキッリキリして、心臓がバックバクしている。
「それだけじゃないことくらい分かってるだろッ、そのダラシない服装を」
「チッ、一々ダッリィんだよ。胸糞ワリィ」
「荒川! 校則の一つくらいは守れ! それが学校のルールであり、社会のルールだ!」
「俺に指図してんじゃねえよ」
「ダリィ。ウゼェ」俺の隣で愚痴を零しているヨウの機嫌は最悪。
仁王立ちしているヨウの担任も機嫌は最悪。
俺は交互に対立している2人を見合って、様子を見守るしかできない。
前橋とのお話し合いとか何とか、そんなのことよりも目の前のやり取りが恐すぎて動けないっつーの!
前橋はヨウの担任に「少し落ち着いて」声を掛けていた。
「服装は今更じゃないですか。取り敢えず、授業の出席のことだけでも」
「甘いんですよ。そうやって見逃しているから、こいつ等はツケあがってくるんです」
こいつ“等”?
待て待て待て、俺も入ってるのかよ。
服装に関しちゃ、俺、真面目ちゃんじゃないかー! ヨウとつるんでいるだけで、なんでそんなツケあがるとか言われなきゃいけないんだ。
授業サボったのは悪いと思うけど、そんな物の言い方ないって。妙に腹立つぞ。
ヨウは担任の言葉が気に喰わなかったのか、片眉をつり上げて盛大な舌打ちをした。
「ンだよ、エラそうに」
「言いたいことがあるならハッキリ言え。荒川」
「じゃあ、ハッキリ言ってやる。エラそうなモノの言い草してんじゃねえぞ。さっきからマジ、ウゼェんだよ!」
「落ちこぼれほどよく吠えるようで」