ベラベラと一方的に前橋が俺に話し掛けてくる。


というか自分の気持ちを吐露してるっつーの? とにかく俺の口挟む余地無し。


前橋、俺、帰っていいかなー。

もう此処に座ってるのヤなんだけど。


「荒川! 聞いているのか!」

「ウッセェな。んなデケェ声出しても聞こえてるっつーの」


向かい側の席から聞こえてくるのは聞き覚えのある声と、教師の怒鳴り声。顔を上げてそっちを見れば、不貞腐れて丸椅子に座っている俺の舎兄。


ちょ……なんでお前まで呼び出されてるんだよ。 



いや、そりゃ俺よりも授業の出席率悪いだろうし、ヨロシクナイ行動を起こしたりしてるだろうし、服装違反上等な不良さまだから目を付けられたとは思うんだけど、なにも俺が呼び出しを喰らってる時に、お前まで呼び出されなくてもいいじゃないか。



なんてタイミングなんだよ……あれか、一種の神様の悪戯ってヤツか。だったらタチの悪い冗談だぜ。



ヨウはスンゲぇダルそうな顔しながら足を組んで、担任の説教が煩いとばかりに片耳の穴に指を突っ込んでる。

その態度にヨウの担任が憤死しそな面を作って「聞いてるのか!」って自分の机を叩いていた。


あのヨウに怒りを向けるってスッゲェ……俺は思わずヨウの担任に感心。


まあヨウの担任は俺達の学年じゃメチャ恐いと評判の説教クサイ学年主任だしな。ヨウみたいな不良でもズバッと言えるんだろうな。

その度胸、是非とも俺に分けて欲しい! 一欠けらでも分けてもらったらきっと、恐い不良様達に悪態くらいは付けられる。多分。


にしても相変わらずヨウはダルそう、欠伸をする始末だし。


そういう態度で更に教師の怒りを煽っているって分かってねーよなー。

煽ってバッカだと余計に説教が長ったらしくなるんだぜ?


こういう時は表で反省した態度を作って素直に謝るのがベストだって。



ああ、言った傍からまた欠伸している。


お前の担任が睨んでいるぞ。


こりゃヨウの方は俺以上に担任とお話し合いになりそうだな。


呆れながらチラチラ様子を見ていたら、俺の視線に気付いたのかヨウがこっちを見てきた。

嗚呼、バッチリ目が合っちまったよ。呼び出されて担任に説教もどきされている、このタイミングでヨウと目が合っちまった。


なーんかイヤーな予感がする。地味の勘が疼いて仕方がない。

そんなことを思いながらも、俺は前橋にバレない程度に手を上げてヨウに挨拶。   


だって目が合ったんだぜ?

俺、ヨウになんて気付いてませーんなんて無視するわけにもいかないだろ。

無視したら追々なんて言われるか! 俺の挨拶に何を思ったか、ヨウは暇から抜け出せるみたいな顔を作ってきた。


……なあ、ヨウ、人のことは言えないんだけどお前、一応説教中なんだろ? なに、その楽しげな顔。

なんで椅子引き摺って俺のところに来るんだよ。


あっち行ってくれ! シッシ! 俺、今、前橋とお話し合い中!