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前言撤回。


俺の生活は穏やかでも、平穏でも、平和でも、のほほんでも、ベラボウチクショウでもない。


特別厄介事に巻き込まれてもないとかほざきましたが、俺は十二分に厄介事に巻き込まれている。


だって俺、田山圭太は人生初。人生初の、  


「最近の出席率の悪さは何だ、田山。サボリ癖でもついたのか?」

「いえ……別に」


「別にでサボるのか、お前は」


こ、恐ぇ。

担任の前橋を目の前に、俺はダンマリになる。


俺、田山圭太は十六年間上辺真面目ちゃんで生きてきた筈なのに、この度、人生初めての呼び出しを喰らっちまった。


しかもそれが授業出席率のことで。


帰りのSHRの時に前橋が「田山、放課後話がある」と職員室に来いって言ってきたんだぜ? この時点で何かあるって思うだろ?


恐る恐る職員室に行ってみたら、前橋が顰め面して自分の席に着いているわけよ。


もう表情からして「俺にとってヒッジョーに不味い話がある」と察しちゃうわけだ。


更には前橋がやって来た俺に気付いて溜息をつく。

三度も深い溜息をつく。

気が済むまで溜息をついた後、職員室の隅に置いてあった丸椅子を持って来て、そこに座れって言うわけだ。


これは長期戦を覚悟しないといけないってことで。


俺は言うとおりに嫌々丸椅子に座って、通学鞄を床に置いて、今こうやって冷汗を流しながら、前橋と話し合っている。


嗚呼、胃がイテェ。帰りてぇ。此処から逃げ出してぇ。


嘆いたって前橋は解放してくれる筈が無い。


「田山。先週、何回授業をサボった?」

「三回です」


「だな。先週だけならまだしも今週もサボってるだろ。今日もサボったな。午前中の授業」


サボった。

はい、サボっちゃいました。


でもあれは、ヨウやワタルさんに誘われて……。


言い訳だって分かってるけど、前橋! お前なら断れるか。

教師の皆様だって泣きを見る、あの荒川庸一と貫名渉にお誘いされちまったんだぞ。断れないだろ!


最初は断ろうと思ったけど、やっぱ断るの度胸がいるし、授業の出席率に余裕があると思って俺、サボっちゃったんだよ! 悪いか、チクショウ!



心の中で叫ぶ俺。

言えないよな……ヨウやワタルさんに誘われたからって。

そういう言い訳を並べても格好悪いだけだし、それに追々面倒なことになりそうだし。

俯いて黙りこくっている俺に前橋が大きく溜息をついて、こめかみを押さえている。


「気のせいかもしれんが、最近、荒川と一緒にいないか? いるだろ? ああ、いるな。お前、最近一緒にいるな。俺を始め、何人もの先生が目撃しているしな。どーせ荒川とサボってるんだろ。ったく面倒だな、お前等。

なんでサボるよ。授業ツマらんか? なあ? 誰だってツマらんもんある。
けど授業は出ろ。聞かんでもいいから授業は出ろ。でなきゃ俺の仕事が増えるだろうが」