銀杏ララバイ


「あの… ギナマはどうしたのですか。
さっきは刀を振り回していたと思いましたが… 」



かおるが心配になって老女に尋ねた。

孝史は何も言わないが、
そのままギナマの側に移って座っている。



「心配は要りません。
いつもの事です。」


「いつもって… あの、
さっきの銀杏丸ってギナマの事ですか。」


「ほ・ほ・ほ… あの子、
銀杏丸と言う名を嫌って
勝手にギナマと変えているのですよ。

ええ、5年前、あなたたちと出会って以来ですわ。

あの時の事が余程楽しかったようです。
こうして来てくださって感謝しています。」



ギナマはおばあさまと呼んでいたし、
長く伸ばした髪の毛は真っ白。

しかし、はっきりと顔を見たかおるは
不思議な感覚を受けている。

かなりの老女のはずなのに
とても上品で綺麗な顔立ちだ。

髪も白髪と言うには見当違いのように、
艶やかな白なのだ。

リンスやトリートメントをしたぐらいでは
あんな風にならないだろう、
と思いながら、
かおるはギナマの祖母を見つめている。



「あの… 今のは何ですか。
泥棒でしたら警察に通報した方が良いと思います。

この間も入りましたし… 」



そうだ、ギナマに会ったら
もう一度はっきり伝えようと思っていた事を、

祖母がいるのなら、
と老女に話しかけたかおるだったが… 



「そうですか。
悪いけどちょっと疲れました。

話はあの子に聞いてくださいな。」



それまでは好意的に話していたと言うのに、

かおるが大切な事を伝えなくては、と思って、
警察云々の話を出した時だった。

老女は短くそう言って目を閉じてしまった。


彼らにとってはとても大切な事だと思うのに、
あまりにも不自然に、

それはまるでとりつくしまも無い、と言う言葉通りの状態で

幕が閉まった感じだった。