『離せ』『嫌だ』


僕達のやりとりは廊下中に響く。
振り替える人達。
見られている僕等。
こんな状況がすごく嫌だった。

そして僕は人生で最大の嘘をついた。



『もう百合が好きじゃない』


『本当に?もう百合を好きじゃないの?』



嘘だ、嘘だ…


僕は君が好きすぎる。
でも僕の心はもう限界を越していた。



『じゃあ優君が百合を幸せにするって言ったのは嘘なの!?』


百合は泣きながら言う。
僕だって本当は泣きたいのに…


『…………』


『ねぇ優君答えて…答えてよ…』



『放して。』



『おい!!やめろって』


すると歩が間に入ってきた。


離れる僕達。


『おい、優!!何があったんだよ、なんだよこの騒ぎ』


僕の中に溜っていたモノが涙となって僕の目から流れ出す。


『…優?』



『百合を信じれない…百合を幸せに出来ない…』



『百合は優君がいるだけで幸せだよ?』



百合…やめてくれ。


もう百合が言う言葉全てが嘘に聞こえる。



『俺は百合が好きじゃない』


こうはっきりと言って僕は逃げ出した。



あの後、百合はどうなったのかな…


傷ついたかな。




百合…ごめん。


僕がこんな弱い人間で。


僕が百合を守れなくて。


僕が百合を幸せに出来なくて。



僕の目からは涙がまだ流れ続けていた。