指輪は名前が刻まれてなかった。


『…どういう事?』

僕は何がなんだか分からなくなった。


僕の何かが壊れ初めていく。


『…ごめんなさい』


『意味が分かんねぇ…どういう事?』


すると滝川先輩が笑いながら言った。


『この前こいつから奪ったんだよ、こいつが俺の横で寝てる時。いつだったかな~、確か新学期始まる頃だったかな~』



百合が先輩の前で寝た時?

新学期が始まった頃?


確かにあの時百合は指輪をしていなかった。
もし先輩の言う事が合っていたなら、あの時すでに指輪はなかったって事になる。

僕の頭は何も考えれなくなった。



もう限界だった。


もう無理だった。


真実を知っているのに、気付かないフリをしていた自分がバカに思えた。


百合を信じるって言った僕はバカだった。
でも、僕の真実は本当の真実ではなかったんだ。


この意味を知るのはだいぶ先。




沈黙になる。


なにかが壊れ堕ちていく…



『百合…もう限界だ。お前の嘘にはもう無理だ』


『えっ…?』



『俺…もうついていけねぇ。まじお前を信じた俺がバカだった。』



こう言い捨て、僕は去っていった。



今までの僕はなんだったんだ。


百合…僕は百合に騙されてたの?




僕は百合から完全に離れていった。