神様は優しくなかった。
当たったのは優君の後ろの席の園田君。
私は園田君に《よろしくね》と言った。
ホントは、優君に言いたかった。
あの頃みたいに。
私のあなたを好きという気持ちは、
あと一滴垂らすと、
溢れてしまうところまで来ていた。
もういっぱいだったの。
だからあの職員室にいたとき、
追い掛けて行って、
気持ちを伝えたかった。
でもそこには広瀬さんがいて、
私の入る場所はどこにもなかった。
一瞬だけ見せた、
広瀬さんの不安そうな顔が離れてくれなかった。
広瀬さんも不安なんだ。
私は何も出来ない
無力な人間だったの。
数日後、私が友達に頼まれたジュースを買いに行って、体育館の横を通ったら、
ボールの弾む音が聞こえた。
私は体育館を覗くと、
一生懸命になって
リングに向かってボールを入れている優君の姿があった。
その姿が、
とてもかっこよくて
更に好きが溢れていく。
優君は私の事に気付いてくれた。
でも優君から出た言葉によって、
私は沈んだ。
優君言ったよね…
今はナナしかいないって。


