この涙が枯れるまで



僕は部屋に入り、ひたすら泣いた。
泣きたくないのに自然と涙が流れるんだ。

百合の泣き顔が離れなくて、離れなくて辛い…苦しい。
あの時、僕は百合を抱きしめそうになった。

もし抱きしめたら、悲しむのはナナだ。
でも抱きしめなかったら、悲しむのは百合かもしれない。

《いつかお前は二人のどっちかを傷付ける》

安里が言ってた言葉。
今思い出した。

僕の願いは、二人とも傷つけたくない。
でもそんな自分勝手な願いを、神様は許してくれなかった。

僕は都合が良すぎる人間で、自分の気持ちもはっきりしないから、神様は怒ってしまったのかな?

ようやくやっと自分の気持ちがはっきりした時には、もう遅いんだ。



~♪


携帯が鳴る。
この音は電話だ。
僕は相手も確認せず、
その電話が鳴り終わるのを待った。



何回も何回もかかってくる。
でも出なかった。
出る気分ではなかった。

《不在着信 ナナ》


ナナ…
ホントはね、怖かったんだ。


出るのが怖かったんだ。でもナナは僕を優しい目をして見ていてくれたね。



ナナ…



僕は…君を幸せにできたかな…