この涙が枯れるまで


『優…?』



『ん?何?』


ナナは僕の異変にすぐ気付いた。


『んーん。何でも…ないの。…帰ろ?』



『うん…帰ろ』

僕はナナに手を指し伸ばした。
ナナは僕の手の中に入った。
そして校門まで手を繋いで歩いて行った。
ナナは今日から右へと帰って行く。
僕は左へと帰って行く。校門で僕達の手は離された。



『じゃあね』



『またな』



僕はナナが歩き出したのを確認すると、僕も歩きだした。


帰っている途中、僕は手を広げて見てみた。
さっきまでナナと手を繋いでいたせいか、少しだけ温かいぬくもりが感じられる。
でも手を広げた瞬間そのぬくもりは、たちまち消えてしまうんだ。


僕は何も感じられなくなる。
ナナの温もりさえも。
その手を僕はポケットの中へいれた。
また歩き出す。


僕の周りに桜の花びらが散っていた。



あんなキレイだった桜も、簡単に散っていく。
でもまた来年も咲く。
キレイな花びらを咲かせる。




百合…
百合は桜みたいだったね。