百合に言った言葉は偽物かな。
《ナナしか見てない》
本当にそうなのかな。
僕は、他人から見たら、ずるくて酷い人間だと思うだろう。
でも一番それを分かっているのは僕だ。
昔僕は百合に《ずるい》と言った。
でもそれは今の僕に言える事。
百合に言った言葉は、僕の今の姿。
そんな罪悪感が僕を苦しめる。
百合を苦しめたように、僕を苦しめる。
―パタパタ…
体育館に向かってくる一人の足音。
僕はその音で反応をする。
急いで涙を拭く。
バレないように。
『優!!ごめんね!!遅くなっちゃった!!』
『あっ…うん…大丈夫だよ』
僕はナナに笑顔を見せた。
ナナを見ると落ち着く。でも自分では自分の顔を見る事ができない。
相手しか見る事ができない。
僕はちゃんと笑ったつもりだったんだ。
でも、今僕がナナに見せた笑顔は、ナナに嫌な思いをさせる笑顔だった。
作り笑顔。
百合は…ずっと僕の中から消えてくれないのかな…


