僕の前から離れていくボール。
誰かの前で止まった。
静かな体育館。
その体育館には二人の人物。
一人は僕で、もう一人は…
『百合…』
『鈴木君…何してるの?』
『……ナナを待ってる』
百合はナナという言葉を聞いたら少し曇った笑顔を見せた。
『あっそうなんだ…』
『うん…百合は…何してんの?』
『ん?あっジュース買いに行ってたの』
『そっか…なぁ…百合…ひとつ聞きたい事ある』
『何…?』
僕は思いきって聞いてみたんだ。
職員室で何を言おうとしたか。
そうしないと、僕の中のモヤモヤが消えてくれないから。
『職員室で会ったとき何を言おうとした?』
『あっ…あれね…香水の事…』
『香水?』
『私があげようとしてた香水…あるじゃない?あの匂いにそっくりだったから…』
ドクン…
百合はあの最悪な誕生日の事をまだ覚えていたんだ。
しかも僕にあげようとしていた香水の香りまで。
何故今僕は動揺したのだろう。
百合は僕の心を汚染していく。
『あれは…ナナにもらったんだ…』
再び百合の顔は曇る。


