この涙が枯れるまで


6時間の授業は終了した。僕はナナを教室へ迎えに行く。


『ナナ~帰ろ~』


『うん!!待ってて~』


ナナは急いで片付け、僕の方に向かってきた。
僕はナナの頭をポンッと撫で、手を握り帰ろうとした。



『あっ!!ごめん優!!私職員室行かなきゃ!!』



『何で?』



『新しい住所書き換えなくちゃいけないの!!ごめん、先に帰って?』



『待ってるよ、俺暇だしさ。体育館で待ってる』



『ホントごめんね?ありがと!じゃあ終わったら体育館に行くから!!』



『じゃな』



僕はナナの手を離し、一人体育館に向かった。
今日は部活がない。
だから体育館は静かだった。
体育館の中心に転がっているひとつのバスケットボール。
僕はそのバスケットボールを手に取り、リングに向かって投げた。

―ダーン…

久しぶりのバスケだから見事に外れた。



『くそっ…』


僕は無我夢中になってボールをリングに向かって投げた。


―ダーン、ダーン



静かな体育館に広がるバスケットボールの音。
僕は何を思ってボールを投げていただろう?
それすら分からなくなる。
全てが分からない。



『鈴木君?』


突然、僕を呼ぶ声が聞こえた。
その時、リングに向かっていたボールが外れた。転がっていくボール。
ボールはある人の前で止まった。



『百合…』