ドクン…
僕はすぐに目を反らした。
このままだと僕はダメになると思ったから。
『じゃあここにサインして』
『はい…』
僕は名前を書いた。
『じゃあもう行っていいわよ?ごめんなさいね』
『あっいいです。じゃあ帰ります』
僕は百合と園田を横目で見て職員室を出た。
『失礼しました』
職員室を出るとナナが待っていた。
『優?』
『お?ナナじゃん』
『あのね…優』
次の瞬間……
―ガラガラ
勢いよく職員室のドアが再び開いた。
『鈴木君!!』
僕を呼ぶ澄んだ声の持ち主。
百合が姿を現した。
僕は振り返る。
百合はナナがいる事を知り、『あっ…何でもないの』と言って職員室に戻って行った。
ナナは下を向いたまま何も言わない。
『ナナ?帰ろ…』
『うん…』
僕はナナの手を握り歩いて行った。
『…優…優はまだ小林さんが好き?』
『何言ってるの?好きなのはナナだけだよ?』
『…うん』
僕はナナの言葉に気持ちが揺れた。
百合をまだ好きと言ったら嘘になる。
でも好きじゃないと言ったら嘘になる。
僕の気持ちはよく分からない。