ナナのお兄さんは裏切った訳ではなかった。
ちゃんとナナを探していたんだ。
ナナ…お兄さんは約束を破ってはいなかったね。
『ナナ…ここからやり直そう。二人で歩いて行こう。ナナ?俺の家族はナナだけだから』
『お兄ちゃん…』
『君…ナナの彼氏?』
『はい…鈴木優といいます』
『ナナを…頼むね』
『はい』
その時、ナナのお兄さんは笑った。
ナナの笑顔とそっくりだった。
『じゃあ、ナナ。俺…帰るな。』
『うん…またね』
ナナのお兄さんは《連絡するから》とだけ言って、去って行った。
ナナはドアが閉まるまでお兄さんを見ていた。
『ナナ?良かったな、お兄さんに会えて』
ナナは僕に抱きついて来た。
『ありがとう…優…私今日来て良かった…』
『いいって。ほら、涙を拭いて?笑ってよ…』
『うん…優…ありがとう』
ナナ…笑ってよ。
ナナが笑顔になると僕も笑顔になるから。
ナナの笑顔は魔法みたいなんだ。
僕を幸せにしてくれる、魔法なんだ。
ほら…笑って?


