僕は気が付かなかった。紅い月が僕を蝕んでいくことに。


―ザーン…

『ナナ…大丈夫?』



『う…ん』



ナナは僕の中で泣いていた。
僕はナナの顔を見る。
頬に手をあて、涙を拭った。
ナナの綺麗な涙を。
ひとつひとつ丁寧に。
砂浜に落ちないように、ふいてあげた。



『ナナ…俺を頼ってよ…頼りにならないかもしれないけど…』



『そんな事ないよ?嬉しすぎるよ…』



『嬉しい?まじか』


僕は笑った。
目には涙があるのに。
ナナを不安にさせないように笑う。

今度はナナの手が僕の頬を触る。


ドクン…



『優も…無理しすぎよ?』


『そっそうかな…』



『だって思ってたもん。最初から』




『ナナはエスパーみたいだな』



『ふふっ優は私のエスパーみたい』



『何だそれ』



『分かんない』


ナナにいつもと同じ笑顔が戻る。
僕は君に言わなくちゃね。
君と出会えて幸せだよ。でもこれはまだ後に言わせて欲しい。

今ナナに言わなくちゃいけない事。



『ナナ…俺…ナナが好きだよ?』