『帰れる?』
『はい…本当にありがとうございました』
『いいよ!余裕やし!てか名前何て言うの?』
『ナナ…ナナだよ?』
『ナナか…俺和哉っていうから何かあったら連絡ちょうだい?君をほっとけない気がして不安だから…
その頭の傷も気になるし』
と言い、和哉は紙に携帯番号を書いて私に渡した。
そして私達は別れた。
帰れる途中、私は何か重かったものが軽く感じた。
それは和哉に出会ったからだろうか…
私は和哉と出会って何か変わりそうな気がした。
叔母さんの家に着く。
もう8時を過ぎていた。
…ガラ―
開けるのがとても苦痛なドア。
それでも開けなければならない。
『…ただいま』
足音が近付いてくる。
叔母さんの足音。
『どこ行ってたの?!』
『…………』
『あんた学校抜け出したらしいじゃない!!!先生から電話があったわよ!?
やめて欲しいわ。いい加減にしなさい。あんたの面倒なんて引き受けるんじゃなかったわよ』
『…………』
『早く部屋に戻りなさい!!』
叔母さんの叫ぶ声で、私は震えた。
私は部屋に戻った。
この家で唯一の私の居場所へと。
部屋に戻り、今日和哉からもらった携帯番号が書いてある紙に目をやる。
和哉にもう一度会いたい。
会ってお礼がいいたい。
会いたい。
会いたい。
私の気持ちは膨れるばかりだった。


