『ナナ食べよ?』
『うん…』
兄が母が作ったハンバーグをレンジで温める。
私はご飯をよそった。
『いただきます』
『うん』
『お…いしい』
『おいしいな。母さんのハンバーグ絶品だもん』
『私この味絶対忘れないよ。大好きなお母さんの味だもん。絶対忘れない』
『…そうだな』
本当はこの時間にお母さんも一緒にお母さんのハンバーグを食べていたはず。
そして必ずおいしいと言っていた。
でも今いるのは兄と私だけ。
その現実が嫌でたまらなかった。
私達は食べ終え、片付けをし、私は部屋へと戻った。
泣き終えたはずなのに、また私は泣き始めた。
兄には聞こえないように、小さい声で。
そして泣き疲れて私は眠った。
夢を見たんだ。
目の前にはお父さんとお母さんとお兄ちゃんがいる。
三人とも笑顔で。
それを見た私も笑顔になる。
お父さんの手とお母さんの手を握ろうとしたら、
フッと消えてしまった。
兄だけがいる。
お父さん?
お母さん?
こう呼ぶと答えるかのように
《頑張れ》
と声がした。
紛れもなく、父の声。
やだ…行かないで。
頑張れなんて言わないで。
《ナナなら出来る》
次は母の声。
出来ないよ。
ナナに何も出来ないよ…
待って…
待って…
そこで夢が終わった。
起き上がるとベットの横で兄が寝ていた。
私の手をずっと握ったまま。
『お兄ちゃん…私頑張るよ。ナナになら出来るよね』
私は父と母の言葉通り、頑張る事にした。


