この涙が枯れるまで



かすかに残る母のにおい。

まだお母さんがいる気がした。


『おかえり』

って笑顔でリビングから顔を出してくれそうだった。


『…お母さん…いるの?』

私は幻を見た。

笑顔の母を。


『ナナ…?何言ってんだよ…』

『だってお母さんがいるよ?』


『母さんがいる訳ないよ…』

『何で?お兄ちゃんには見えないの?あそこにいるよ?笑ってるよ?』


『やめろ!!!ナナ…』


兄が私の目を手で覆う。


視界が真っ暗になる。


涙が次々へと流れだす。


お父さん…お母さん…


何で私達を置いていってしまったの?


何故…?

どうして?



お父さん…私お父さんの事大好きだった。

怒られる事ばかりしていたけど、怒られた後にお父さんが笑顔で優しく頭を撫でてくれる瞬間が好きだった。
最後に喋った言葉は、
ただ一言だけ。


《おはよ》

もっと話せば良かった…

もっとお父さんの笑顔やきつけておけばよかった…

お父さん…

私お父さんの娘に生まれてきて本当に良かった…



お母さん…

お母さんにはホントにいろいろ迷惑かけちゃったね。
ケンカが絶えなかったけど、一番私の事を理解してくれて、話をちゃんと聞いてくれて…


私、お父さんとお母さんが大好きです。