――元治二年(一八六五年)一月


新撰組の正月は大晦日から元日にかけてまで盛大に行われた。
だがお祭り気分もつかの間、二日からは通常任務に戻っていた。



「三ー木組長ー。くっつかせてくださいよー」



「な・・・ななななっ!君は目上の者にきくくく口かっ!!」



町全体もやっと正月の雰囲気から抜け出した一月の中旬。

京にはいよいよ本格的な冬が訪れ、楓が巡察に出掛ける頃にはぼたん雪が降り始めていた。


寒さが人一倍苦手で嫌いな楓が巡察時にどうにかしてこの京都特有の凍てつく寒さを凌ごうと最近考え出したのが、この三木三郎いじりである。

三木は伊東の弟で、彼と共に入隊し今は九番隊の組長という役職をもらっている。
剣術はそこそこできるため入隊してすぐに組長か?という文句はあまり出なかったのだが、性格と体型に少々難ありだった。

性格はとにかく目下の者に偉そうなのだ。特に敬語や発言の内容にはうるさく、冗談が通じない。体型は見るからに冬でも温かそうな小太りで、兄の甲子太郎にも痩せろと再三再四言われているという噂である。

そんな突っ込みどころ満載の三木は見事に楓の玩具となってしまったのだ。



「ええやん。組長かて新人と変わらへんやろ?うちのほうが先輩やん」


「おお沖田君!君は部下にどど・・・どういう教育を!」


「あははは!いいじゃないですか三木さん。無駄に体温放熱するより分け与えてあげたら効率いいと思いませんか?世の中助け合いでしょう!」



「なっ・・・ななな!!」

(((ぷっ!!)))


後ろについていた他の一番隊と九番隊の隊士たちが懸命に顔を真っ赤にする三木を見て笑いを堪える。


「三木組長わかるやろ?こんなやつの下でまともなやつなんて育たん」


「面倒見てあげてるのに酷いこと言いますねぇ」


こうして日が落ちてきた京の町を巡察していく一番隊と九番隊であった。