だれかが指摘していたのだが

後ろから見たら女の子の長めの髪がマフラーにおさまりきれない部分が“もこっ”と盛り上がっていて、あそこが気になる、と

たしかに日常でその部分、その状態を目にすることはあるのだが、呼び名がなく、そう考えるとたしかになおさら無性に魅力的に思えてきた



わたしは後ろから見た、女性のひざの裏の“くにっとしたヘコみ(横に入った線含む)”と、そこを含む上下(スカートとソックス)の露出領域が好きだ

あそこも名前がないからこそ、その不確定な、むにゃむにゃした甘い感覚が、魅力を増す要因となっている



女性のニーハイソックスとスカートの間を「絶対領域」と名づけたとき、その存在に気づいていなかったものは新たなフェチズムの誕生に興奮をおぼえただろうが

いままでその名付け得ぬ部分を好きだった者にしてみれば、突然に商品化、形骸化したそれを今までと同様の気持ちではたして愛せただろうか

新しく生まれた「絶対領域」と“未だ名づけ得なかったもの”との、同じ場所をさしているはずなのにかもす魅力のちがいを、まちがいなく感じていたはずなのだ



名づけ得ない、神聖な領域なままであることこそ、人を惹きつける重要な要因なのではないか



だとしたらマフラーで出来た“髪の盛り上がり”も、“ひざの裏のスカートとソックスの間のひざの裏”も、このままその存在をひそめたままでいてほしいと、願わずにはいられない

名づけられた瞬間、人はその部分を「所有できた」ことに安心しきってしまう

もしも、あなたが気になる異性を魅惑的な芳香で鼻腔をくすぐりつづけたいと願うならば、それはあなた自身のこと、名前でも、生き方でも…なんでも謎めかすことだ

名づけ得ぬ部分が多い者こそ、人は追いたがるものだから



そしていつか

その人のものになれたなら

その人の名が、あなたに名づけられるだろう



追記

ネットで検索したら、ちゃんとひざの裏にも名称があった。しかしわたしはそのひとときの記憶を完全に抹消することにした。正確には“その上下数十センチの部分”であるのだし、その無慈悲な名称はその部位からかもし出されるなまめかしい雰囲気とは全く相容れないものだったからだ