朝目覚めて

テレビの画面を眺め

自転車で風景を飛ばし

せまい空間に押しつぶされ

流れ作業で日常をさばき

うすよごれた風景に疲れながら

帰宅する



いつもの

色気のない生活



その日

いつものとおり

朝目覚めて

画面を眺め

風景を飛ばし



そこで目が合った



彼女はその目で

じぃっと

ぼくを見つめてきた



すべてを射抜くような

それでいてすべて吸い込んでしまいそうな

その瞳に

ぼくは関心を持った

心にいっぱいの“なぜ?”が浮かんだ



翌朝

目覚めてすぐそれを思い出す

太陽がいつもより輝いて見えた

テレビの中のひとたちの笑い声がより大きく感じた

自転車で見る風景は生命にあふれ

電車の中にいる人たち一人一人の顔には感情があった

意味のない数字や記号には人生が見え

つまらないグチや悪ふざけにもやさしさが見えた



そして一人の、帰り道



見上げた空に

あの人の瞳が見えた

とても色っぽくて

ぼくは

そのまま彼女と

しばらく見つめあっていた



あの人に見つめられたらから

見つめ返すことができたんだ

このつまならい世界を

“関心”と言う名の

瞳でもって



世界への

ありがとうとともに