弘が去っていくと、ようやく寒気も取れた。
「ビ・・・ビビッたぁ・・・。」
炎天下の中、健はまだ寒いようで、腕に鳥肌が立っている。
「な・・・何あれぐらいでキレかかってんの・・・?」
いつもの健の勢いなどまるでなく、力が抜けているようだ。

弘の言った「くだらない理由」。
これは一番気になった。
じゃあ・・・他の理由が・・・?
その時、またしてもあの『真央』と言う名前が頭をよぎる。

「・・・健。」
「ん?」
「この近くにさ、真央って女いる?」
単なる軽い疑問。
でも、知りたかった。
「あぁ・・・知ってる。姫百合学院の生徒だよ。」
姫百合・・・。ここら有名のお姫様学校だ。
といっても、金持ちが多いわけではない。
可愛い奴が多いから、皆そう言っているだけだ。

「神無月(かんなづき) 真央(まお)。好きなことは短距離走と読書。顔立ちが大人っぽくて可愛い子でさ。でも・・・1ヶ月前の通り魔事件のとき、毒かなんか注射されて、両腕が使いものにならなくなって・・・手術で切っちまったんだって。」

そのとき、あの時の『その腕を治してやるから』という弘の心の声が脳裏をよぎった。
・・・辻褄が合う。