「?おい優、どうし・・・」
突然止まってしまった俺の様子に気付き、健も後ろを見る。
と同時に、健の動きも止まった。
殺気が伝わったのだ。

「た・・・橘・・・」
声が震えている。
おそらく、睨まれたのは初めてなのだろう。
歯をガチガチさせて俺のほうを向こうとする。

そんな俺たちの所に、弘が寄ってきた。
近くで見ると一層迫力が増す。
普段は大人しくて暗くて、弱いように見えるのに・・・。
喧嘩慣れしてなかったら、きっと俺たちもあの教師のように失神していただろう。

「・・・・・」
弘は睨むのをやめたが、冷たい目でこちらを見る。
金縛りのような感覚がなくなったものの、寒気が消える様子は無い。
弘は、そのまま俺の耳元で小声で言った。

「俺の悪口ならいくらでも言っていいが・・・実験の理由をそんなくだらないふうに言うのはやめてくれないか?」

それだけ言うと、弘は俺たちをおいて、さっさと校門を出てしまった。