・・・・病院・・・・・・

「ツツジ。」
「ん?」
暗い声で言った俺のほうを、ツツジがゆっくりと向く。

「お前が入院してる理由・・・あれ、本当に記憶喪失だけなのかよ。」
俺がこう聞いているのには訳があった。
それは、昨日の姉貴との会話の時。

・・・・・・・・昨夜・・・・・・・・

訳があるような目でツツジの事を聞いてきた姉貴の異変に気付き、俺はその訳を尋ねた。
「菊野病院の事で・・・姉貴、何かあったのか?」
「・・・お前とは関係ねぇとは思うんだけど・・・。ちょっと前に、車の衝突死亡事故があったの、知ってるか? 6ヶ月くらい前に・・・。」

その話は前から知っていた。
たしか、俺の通っている学校の近くだった。
相手の飲酒運転で、子供と2人で乗っていた母親が死んだとか。
「それで・・・?」
「その生き残った子供、記憶喪失になったんだってさ。挙句の果てに・・・」
記憶喪失と聞いて、俺はツツジを思い出す。
・・・と同時に、嫌な予感がした。

姉貴が次の言葉を言う前に、俺は逃げるように居間から出て自分の部屋に戻った。

その翌朝、ツツジの病院に行く前に、ネットで昨日に聞いた事件の事を検索する。
すると、思ったとおり、大きな写真も載せられている。