「げほっ!げほっ!」
「何むせてんだお前。」
むせている俺を見て、姉貴がバカにしたような目つきで言った。
「・・・もしかして、ニヤけるような夢でも見てたのか?」
夢かどうかはわかんねぇけど。
自分の手を見たとき、微かにツツジに握られた時の優しい感触が蘇る。
そう思うと無性に唇の端が歪んだ。

「またニヤついてるし・・・。」
「彼女が出来た夢でも見たの?」
そう言ったお袋に、姉貴が付け足した。
「ま、彼女が出来るなんて話は、優にとっちゃ夢のまた夢だけどな。」
「そういう事夢で例えるのやめてくれます?」
わざと敬語で言ってやった。

「姉貴だって彼氏いねぇじゃねぇか!」
「でもあたしは中1で彼氏作ったし。なのにお前は作ってない。」
「--------ッ!!」
悔しさをこらえて歯を食いしばる。

「あ、出来たら紹介してね♪」
そう言うお袋を無視して、家を飛び出した。
「彼女いない暦=年齢」という悔しさをこらえて・・・。