十数メートル先の、ちょうど林と広場の境界線上。
そこに、まるで空間を引き裂いて出てきたかのように、複数の人間が不意に姿を現した。
声もなく、表情すら消して整然と近づいてくる異様なその人の群れを、純ちゃんと二人、言葉もなく息を飲んで見つめる。
濃紺のブレザーと、グレーのスラックス。そしてエンジのネクタイ。
見覚えのある制服姿の男子が五人。
そして、その少し後ろを遅れて歩み寄ってくる、見覚えのありすぎるスレンダーな女子が一人いた。
柔らかな秋の日差しに照らされた健康そうな小麦色の肌と、風にそよぐ少し癖のあるセミロングの黒髪。
彼女が歩くたびに、ひらひらと広がるグレーのプリーツスカートが、芝の上に陰影を刻む。
「良子……ちゃん」
私が呻くように名を呼ぶ声と、純ちゃんが低く舌打ちする音が重なった。
あと十メートルと言うところでピタリと足を止めた良子ちゃんの赤みを帯びた口の端が、きゅっと笑みの形に弧を描くのを、私はただ呆然と見つめた。
あれは良子ちゃんだけど、良子ちゃんではない。
肉体は確かに良子ちゃんのものだけど、その体を操っているのは、グリードだ。
憑依能力を持つグリードとの戦いは、三年前の、凄惨な記憶を鮮やかに甦らせた。
今の状況は、あまりにも『あの時』と似ている。
私の力が覚醒した、『あの時』と。
私が『ゴッド・ハンド』と言う能力を受け入れる決断を欠いたために、あの時、パラレルワールドの良子ちゃんは、命を落とした――。
泣いても、叫んでも、喚いても、
もう二度とは帰ってはこない、大切な人の命。
また、繰り返すの?
あんな悲劇を。
あんな苦しみを、また味わうの?
握りしめた両手の平に、冷たい汗が滲み出す。
逃げ出したい。
だけど、それだけは、絶対できない。
せめぎ合う葛藤を胸に抱き、ただ唇を噛みしめて、良子ちゃんから顔を背けないでいるのが精いっぱいだ。



