黄昏色に、さようなら。


「なに? 私の顔に、何かついてるの?」


力で制御しているから、考えを読まれている訳はないんだけど、


私の顔を見つめてニャッと笑うその表情が、まるでなんでもお見通しだと言ってるみたいで、なんとなく面白くない。


「ああ、落っこちそうな目ん玉二つに、美味しそうな肉マンほっぺがついてるな」


「にくっ!?」


肉マン言うのか、この状況でっ!?


少しぶーたれていると、純ちゃんはクスクスと楽しげに笑いながら左手を伸ばし、私の頭をグリグリとかき回した。


「ちょ、ちょっとやめてよっ」


「相変わらず、ポチ並にかき回しやすい頭だなー」


ポチとは、研究所で飼っていた双頭のバイオ・シェパード犬のことで、純ちゃんが、いつもこんな風に乱暴に撫でていたのを思い出した。


ポチは優しくて大好きだったけど、それとこれとは、話が別だ。


「どうせ、ポチ並ですよっ」


扱いが犬並なことに、更に頬を膨らます。


やっぱり、あの告白は聞き間違いだ。そうに違いない。


俺が本気で惚れた女、じゃなくて、俺が本気で惚れた女とそっくりな女、っていう線も捨てきれない。


ああ、なんだか、かんだか……。


なんて、緊張感の欠片もなく、落ち込んではいられない。


一つ大きく深呼吸をして顔を引き締め、休む時間をくれた純ちゃんを真っ直ぐ見上げ頷く。


「ありがとう。もう大丈夫」


「そんじゃ、そろそろ空間閉鎖を解くからな。おそらく、すぐに敵さんがやってくるが、行けるか?」


そう、敵の狙いは私。


力が覚醒した今の私の存在そのものが、敵であるグリードを引き寄せる。


「うん」、と大きく頷くいた次の瞬間、パチン、と空気がはぜるような音が響き渡り、


私たちがいた広場を守るように張り巡らされていた障壁が消え、空間閉鎖が解けかれた。