黄昏色に、さようなら。


「風花――、風花っ!」


すうっと意識が覚醒してすぐ耳を叩いたのは、大音量の純ちゃんの呼び声。


ほとんど、抱えられるように純ちゃんに預けていた体の隅々に、力が満ちてくる。


「風……?」


私の変化に気付いたのか、純ちゃんは私の体に回していた両腕を緩めて体を離した。


「大……丈夫」


まだ少し荒い息を整えるように大きく空気を吸い込み、両足に力を込めて地面を踏みしめる。


うん。もう、大丈夫。


私は、自分の足で、立てる。


「……平気。大丈夫だから」


尚も心配げに、私の体を支えるように添えられているその両腕をそっと押しやり、顔を上げ、真っ直ぐ純ちゃんの瞳を見据えて、口の端を上げた。


「記憶も力も、完全に戻ったよ。あ、ついでに現状も把握済み」


私には、過去見の能力がある。


だから、純ちゃんがここに居る経緯を知っていても、訝しがられる心配はない。


少し驚いたように目を見張った後、純ちゃんは苦笑を浮かべる。


「そうか、なら話が早い。正直時間がないんだ。

人為的にパラレル・スリップができるようになりはしたが、まだ時間制限付きで、それを守らないとちょっとヤバい。

それに、今回は正式に『ガーディアン』として派遣されたわけじゃないんだ」


「うん、分かってる」


『ガーディアン』は、、『グリード』に対抗するために作られた政府が黒幕の秘密組織。


あくまでも、あのパラレルワールドを守るための組織に過ぎない。


いくらグリードの残党が犯罪目的でこの世界に紛れ込んだことが分かったとしても、


わざわざ試作段階の時空間移動マシンを使って、多くのリスクを負ってまで、他の世界をご親切に助けに来る義務も責任もない。


今回の事は、純ちゃんの個人的独断による、非合法なもの。


純ちゃんは、私のために、


私が住むこの世界のために、危険を冒して来てくれたのだ。