黄昏色に、さようなら。


俺様で、傍若無人で、女好きで、セクハラ大魔王で。


誰よりも愛情深いのに、


愛の言葉なんか絶対口にしない、超照れ屋。


『俺が本気で惚れた女だからな』


あの純ちゃんの口から、あんな言葉が聞けるなんて、思ってもみなかった。


『少しは、成長してるのよ、純ちゃんも』


彼女が、嬉しそうに口の端を上げる。


「うん、みたいだね」


つられて込み上げる、笑いの衝動。


二人でクスクスと笑い合っていると、遠くで必死に私の名を呼ぶ純ちゃんの声が聞こえてきた。


『ああ、ほら、心配しいが呼んでるから、行ってあげて』


「うん。もう行くね」


小さく頷き、胸をよぎる別れの予感に、思わず目を伏せた。


『フーカ。私にはもう、見ていることしかできないけど……』


私を励ますようにギュッと握られたその両手には、以前感じられた柔らかい感触も温もりもない。


覚醒した力が感じ取った、その存在の希薄さ。


もうすぐ、限りなく近い存在である私にすら見えなくなる時がくるのかもしれない。


たぶんきっと、今が、こうして言葉を交わせる最後のチャンス。


泣いたらだめ。


笑わなくちゃ。


そう思うのに、


深く抉られるような胸の痛みで、上手く笑えない。


『フーカ。負けないで……』


かろうじて耳に届く今にも消え入りそうなその声に、居ても立ってもいられず彼女を抱きしめ、ただ、コクリと頷く。


うん。負けないよ。


絶対負けない。


私の心の声に応えることもなく、


微かな優しい花の香りだけを残して、彼女の気配は静かに消えていった――。