驚きすぎた私は、体を強張らせたまま目を瞬かせる。
『ごめんね』の言葉は、口から滑り出す前に彼の唇に遮られてしまったのだと、ぼんやりと理解した。
近づきすぎてピンボケだった彼の顔が少し離れて、呆然と見つめる私の目の前ですっきりと像を結ぶ。
くっきり二重の色素の薄い茶色の瞳が少し照れたような色をたたえて、それでも真っ直ぐに私の視線を捉える。
そして彼は微かに口の端を上げると、信じられないような台詞を吐いた。
「餞別に、貰っておくよ」
は、はあっ!?
「せ、餞別ぅっ!?」
今の今まで『そんな気はこれっぽっちもない』ような涼しい顔で私の言うことをスルーしておいて、最後の最後に、こんなっ。
こんなの、不意打ちじゃないかっ!
「加瀬純一郎の卑怯者ーっ!!」
……って、
……あれ?



