「…ミッキー。」



突然、腕を掴まれた。妖精はこちらを見つめていた。


「…な、なに?入場料、アンタの分まで払えって?」


「そんな事言わないよ。…ちょっと来てくれる?」


「う、うん…。」


妖精は、夏男にメールして、どんどんと、廊下を歩いていく。



どこに行くのかも聞かされずに、ただ、妖精の後を着いて行った。
校舎の真ん中あたりの階段を一番上まで上がって、目の前にはドア。


妖精はポケットから鍵を出して、鍵を開けた。
ドアを開くと、そこは屋上だった。


「僕の、お気に入りの場所。」


「へえー。風が気持ちいいね。」


秋の風は少し冷えるけど、とても気持ちいい。


「僕さ…春の学校行事で、演劇やったんだ。役は、妖精。」


「よ…妖精?」


「そう…妖精。」



**************


僕は学校行事の舞台でピーターパンの妖精役をやらされる事になった。
屋上で台本を読み、自分の役に目を通した。


ティンカーベル…


「女じゃないか」


ボソリと呟く。すると同時に、フワリと気配を感じた。


「岩松光太くん―…だよね?」


声の方に顔を向けると、新任教師の桜井先生だった。
クラスの男子…クラスだけじゃなく学校全体、女子までも…皆が口を揃えて『綺麗』だと言う。


僕もその一人だった。