――しん、しん。

 はあー……って、口を開けて息を吐くと、それは一瞬のうちに白く染まった。灰色の雲に向かってのぼっていった白い息は、やがて融けるように消えていく。

 ジャックはその始終を見て、今日はクリスマス・イヴだと静かに口元を緩めた。

 ジャックはお店で買った安いながらもあたたかいセーターを着込み、手にはあたたかそうな手編みの手袋、耳には青い耳当て、そして頭にはしましま模様のニット帽を着用していた。

 寒さには十分たえられそうな格好をしながら、ジャックはひとり、しんしんと降る雪の夜道を歩いていた。

 日はすっかりと暮れてしまい、静かな夜の街に、ジャックが地面を歩くたびに鳴る雪を踏む音だけが響いていく。


「早く帰らないと、あたたかいスープ作りに間に合わなくなってしまう……」


 早足に夜道を進むと、雪に足を絡め捕られて思うように歩けなくなるのに、ジャックの気持ちが“早く、早く”と、足を急がせようとする。


「せっかく、安くて美味しそうな食材を買ってきたのに……」


 ジャックがこんな夜中を歩いているのには、わけがあった。