親太郎は、病室を出ていくおばさんの背中を、ただ静かに見ていた。 横顔はとても真剣で、男の目をしていた。 「親太郎くん。診察室に来てくれるかな?」 白衣を着た男の先生が、看護師を連れてやってきた。 いくつぐらいの先生なんだろう。 とても若く見えた。 メガネの奥の切れ長の目は、鋭くも、優しい色をしている。 「親太郎くん。これに乗って」 看護師が、親太郎の身体を支えて上半身を起こし、車いすをベッドに寄せた。 けれど、親太郎は首を横に振った。 「大丈夫です。自分の足で歩きます」