「……菜緒?」
親太郎は、呆然とあたしの動きを見ていた。
まだ状況を理解していない。
あたしの隣に、片山さんも座ってくれた。
あたしがミスしたときのために、フォローに来てくれたんだ。
「親太郎!! 生まれてきてくれて、本当にありがとう!!」
あたしは、大声で親太郎に言った。
「あたしね、親太郎と一緒に歌いたい曲があったの。片山さんに教えてもらってね、ピアノも弾けるようになったの!! まだまだヘタだけど、笑わないで聞いてね!!」
あたしが言うと、会場はまた歓声に包まれた。
あたしは、高橋くん・拓海くん・叶くんと目を合わせ、鍵盤の上にそっと手を置いた。
「田沢さん。大丈夫。きっと成功するよ」
片山さんが優しく言ってくれた。
あたしは片山さんに頷いて、呼吸を整えて前奏を弾いた。
その瞬間、親太郎の目が丸まった。
「おまえ……」
親太郎の口が、そう動いた。
前奏を弾き終わり、歌いだしが近づくと。
突然、高橋くんのバッチの音がカチカチと響いた。
……え?
なに……?
あんなの、練習のときにはしなかったのに……
そのとき――。
舞台袖から、たくさんの3年生がぞろぞろと出てきた。
……え?


