さぁて。
親太郎にはきちんと伝えた。
これが最後じゃない。
あたしには、あとやらなければいけないことがある。
本当は一番最後に親太郎に伝えるべきだったんだけど、親太郎に言ってしまったらもう後には引けないから、この順番でよかったんだ。
あたしは、ちょっと病室を抜けだし、親太郎の担当医のもとへ走った。
先生がいつもいる部屋をノックし、気を引き締めて中へ入った。
「菜緒ちゃん、どうしたの? そんなに改まって」
今更ながら緊張してきた。
手の平に汗を握り、拳を握りしめた。
先生は今までつけていた眼鏡をはずし、首を傾げた。
あたしは唾を飲み込んで、深く頭を下げた。
「先生、お願いします!!」
「え? おいおい、どうしたんだ?」
いきなり頭を下げたあたしに驚いて、先生は歩み寄った。
「お願いします!! 親太郎の外出許可を下さい!!」


