「あの……」
音楽室で練習をしていると、少し開いたドアの隙間から遠慮がちに顔を出す女子がいた。
拓海くん達は楽器の演奏を止め、視線を向けた。
ドアの陰に隠れながら立っていたのは、片山さんだった。
あたし達は4人で目を見合ってから、『どうしたの?』と聞いた。
「あの……」
同じ言葉を繰り返す片山さんは、おずおずと音楽室に入ってきた。
「なにか、あたしにできることないかな?」
小さな声。
俯いて、あたし達の誰とも目を合わさなかった。
まだあの時のことを、気にかけているんだろうか。
「あたしも、三浦くんのために、なにかしたくて……」
ダメ、かな……?
言葉をぎこちなくつなげる片山さんに、涙が出そうになった。
体中が熱くなった。
それはきっとあたしだけじゃないと思う。
高橋くんも、拓海くんも、叶くんも。
一気にやる気が出てきた。


