「菜緒、寝たの?」
あたしが急に黙り込んだため、親太郎は少し体をあたしに向けながら聞いてきた。
「ううん。まだ起きてるよ。なんだか、今日は眠れそうもなくて」
「なんかあった?」
「………」
「急に泊まりたいとか、珍しいじゃん。あっ、わかった。 家に帰ると勉強しろっておばさんからうるさく言われるから帰りたくないんだろ? ほんっと、おまえらしいっつーか、なんつーか」
笑いながら言う親太郎の声を聞いていると、また涙が浮かんできた。
大好きな大好きな、親太郎の声。
失いたくない……
隣の温もりがなくなると思うと……
「おい、菜緒?」
また黙り込んだあたしを不思議に思ったのか、親太郎は寝返りを打ってこちらを向いた。
慌てて涙を拭い、唇を噛みしめた。
涙を我慢すると、のどの奥が痛くなった。


