「……帰りたくない」
「え……?」
「帰りたくないよ、親太郎。今日はここに泊まる」
「泊まる…って。そんなわけにはいかないだろ。おまえ明日も学校あるのに」
「それでもいいの。泊まるの」
一歩も引かず親太郎に言うと、親太郎はため息をついて笑った。
「ったく。俺の負けだ。おまえは昔から一度言い出したら聞かないからなぁ。でも、ベッドはこれだけしかないからな。狭いとか文句言うなよ」
あたしは涙を拭い、『言わないよ』と、笑顔を見せた。
看護師さんに許可をもらい、あたしは親太郎のスウェットを借りてベッドにもぐり込んだ。
「親太郎、もう大丈夫なの?」
背中合わせで、親太郎に聞いた。
「今は薬で落ち着いてるから、もう鼻血はでないよ」
「そっか……」
あたしの背中で、親太郎の呼吸が感じ取れた。
ゆっくりと、上下に動いている。


