親太郎には、あたしの考えてることなんてお見通し。


いつもいつも余裕な顔して、あたしの少し先を歩いているんだ。


たまにあたしの事を心配して振り向いてくれるけど、やっぱりその表情は、余裕に満ち溢れている。


手を差し延べてくれるのかと思ったら、自力で歩けとまた先を歩いて。


そのくせ、コケそうになった時は、すぐに体を支えてくれる。



悔しい……


親太郎ばっかり余裕なんて……


音楽バカのくせに、生意気なんだ。





合唱コンクールでは、見事金賞をとることができた。


初めは、『指揮者なんて俺歌えねぇじゃん』と、不機嫌だったのに、結果発表で『金賞』と響いたとき大声で一番飛び跳ねたのは親太郎だった。



あの時の親太郎の、ピョンピョン飛び跳ねて喜ぶ姿は、今でも、あたしの胸の中に残っている。




―Chapter 1―