詳しいだろ…って。


それはそうかもしれないけど、片山さんは親太郎に近づきたくて練習に誘っていたのに。


それをこんなに素っ気なく言って先に帰っちゃうなんて。


……って。


なに言ってるんだろ、あたし。


片山さんに興味を示さず、本当にただの練習で、しかも、先に1人で音楽室を出てきた親太郎に素直に喜べばいいのに。


あたしって、本当に可愛くないなぁ……



スクっと立ち上がり、親太郎を残して大股で歩いた。


後ろから、小さなため息らしきものが聞こえたような気がした。


でも、そんなの無視してやる。



「あー、あー。そこのセミロングの、機嫌の悪い女子高生止まりなさい」


意味が分からず、眉間にしわが寄った。


「何よっ!!」


クルリと振り返る。


すると親太郎は、まるで手に無線のマイクを持っているかのように、口元に手を当てていた。


「田沢菜緒。キミを、安眠妨害の罪で逮捕する」