でも――。
その祈りは通じなかった。
あたしの手の中で振動した携帯。
小さな窓に表示されたのは“親太郎ママ”。
……うそ。
うそうそうそうそうそうそっ!!!
あたしは、勢いよく椅子から立ち上がり、携帯に出る前に教室を抜け出した。
まだ授業が始まったばかりだった教室からは、先生の怒鳴る声と、クラスメイトの騒ぐ声が聞こえてきた。
まだ振動し続ける携帯。
階段を駆け下りながら、携帯の通話ボタンを押した。
『菜緒ちゃんっ!!!!』
携帯の向こうから、おばさんの大声。
その声に体が震えだしたあたしは、階段の途中で足を止めてしまった。
『菜緒ちゃんっ!!!! 親太郎がっ!!!! お願いっ!! 早く病院に来てっ!!!!』
ハッと息を飲んだ。
また体が震え始める。
親太郎が……
親太郎が……
親太郎がっ……


